『烈風は吹かず』その2
  烈風に当初与えられたエンジンはベンチテストの結果、
1300馬力(高度6000メートル)しか出ていませんでした。
  しかし、同じエンジンで川西の紫電改はより優れたデータを残しています。
  中島の疾風に至っては、600km/h以上を発揮しています。
  オクタン価の考察で少し述べましたが、疾風の最高速データである
624km/hはせいぜい1300馬力〜1400馬力(高度6000m)で
マークしたものと考えるより無く、このエンジンを与えられて零戦と同等程度
では話になりません。
  もっとも、設計者自身の記した著作『零戦』(朝日ソノラマ航空戦史)にも
零戦との模擬空戦の話が掲載されており、2000馬力のハ43に換装して
ようやく零戦をいくらか凌ぐ程度の空戦性能でしか無いことが明記されています。
(設計者にインタビューすると必ず、烈風の話を聞けば零戦に、零戦の話を
  聞けば96艦戦へと話を持ってゆかれたそうです。
  烈風をして『零戦の再来』とするのは、設計者のリップサービスだとワタシは
  思います−余剰馬力の重要性を理解していない筈がありませんから−)

  この時期、その零戦はF6Fには全く抗し得ない存在であったことを
認める必要があります。

  烈風がF6Fと出会ったらどうなるのか?
  まず加速力と上昇力で劣るので、たいていは相手に頭上を押さえられての
空戦となります。
  そして、旋回する度に高度と速度を失ってゆきます。
  レシプロ戦闘機にはジェット戦闘機のような「旋回しつつ加速」なんて
真似は出来ませんが、程度の比較は出来ます。
  どんなに腕の良いパイロットが操ろうとも、「F6Fより低空を低速で飛ぶ」
窮地に自らを追い詰めてしまいます。

  ここまで読んでも「速度が出ていなくてもひらりと旋回して躱せば良いのだ」
などとのたまう人もいるかもしれませんが、そういう人はメールなど
寄越さないように願います。
  単機vs単機の空戦訓練ならそうかもしれませんが、多vs多ではそうも
行きません。
「War Birds」でもプレイしてみれば、相手より使えるエネルギーの
少ないことの意味は理解できるでしょう。

  繰り返しになりますが、空戦機動すると言うことは空中での位置を変えると
言うことであり、エネルギーを使うと言うことです。
  使えるエネルギーを増やす、このことが空戦性能を高めることになります。

  さらに、何故大戦後期から以降は戦闘機が攻撃機や軽爆撃機を兼ねているのか
それもここに起因します。
 

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